お客様からの声、常に動いているコレクションの世界で今、何が求められているか。
レコレクショヌールヘ頂くお問い合わせで、何人かの方から同様のお問い合わせを頂いた場合、または私たちコレクターが皆一様に共通して関心を持つ内容であるケースをご案内しています。

  <目次>

コレクターとの会話・8
コレクターとの会話・7 「オークションとコレクション2」
コレクターとの会話・6 「オークションとコレクション」
コレクターとの会話・5
コレクターとの会話・4
コレクターとの会話・3
コレクターとの会話・2
コレクターとの会話・1


〜コレクターとの会話・8〜

「サイトのコンテンツについてのコレクター・リエナクターの方々との会話― WW2ドイツ、トラーゲグルテについて」

「コレクションの話2」のトラーゲグルテについてのコラムに関して、メール、お電話で多くのご質問、お問い合わせをいただきました。ほとんどは現物の素材と構造についてのご質問、また実物入手についての難易度と価格の予想についてのお問い合わせでしたが、そのなかに、現在または以前に実物の代用としての「悪意のない」複製品についてのお問い合わせがかなりありました。WW2ドイツ・コレクションではリエナクトメント、また真剣なコレクションにとっても良質なレプロダクションは、「代用ユニット」として必ず必要といえるでしょう。なかでもトラーゲグルテはそういった「意識発展のための」レプリカとしては絶対に必要なもの、といえるかもしれません。しかし少なくとも海外製に関してはこれまである程度の流通量があったものは、ないようです。映画用精密複製品の開発生産で知られるアメリカのSMホールセール代表、マクローガン氏は、日本のマーケットを重要視しており、関東での各販売催事に来日して直販をしてリエナクター、コレクター諸氏に喜ばれています。このマクローガン氏は来日のつど「何か売れるレプリカはないか、次期製品の良いアイデアはないか」と聞いてくるのですが、「トラーゲグルテ?あぁ、イナァ・サスペンダーのことね。問題ない。造ってみよう。」といったまま、数年が経っています。非常に情熱的で聡明な氏のことですから、製作に向けて動いてはいるのでしょうが、どうも製品完成には至っていないようです。トラーゲグルテの自然にアーチをかく構造上、製造コストの問題もあるのかも知れません。絶版レプリカ・代用品の発掘も、実物入手と同様に重要な仕事であると認識しているレコレクショヌールではありますが、今までの海外での取り引き現場では、手作り段階の代用品しか、遭遇したことはありません。しかしながら、ある意味でこの手作りレベルという点から発展させて、このトラーゲグルテに関しては、リエナクター・コレクターがご自身で代用品を作ってしまうのもひとつかも知れません。リエナクトメントが当時の状況再現であるとするならば、トラーゲグルテを取り付けた野戦服で装備を吊ってみて、当時のドイツ兵士が感じた重量を体験し、その量を減らして、または増やして、さらにYストラップ装備時の重量の体感度との違いを意識するのも、リエナクトメントの最重要課題のひとつといえるのではないでしょうか。多くのミドルクラス以上の構造をもつレプリカ野戦服がトラーゲグルテの装着に必要な裏地を再現している、というのも利点の一つでしょう。実際に以前レコレクショヌールが参加した屋外イベントで、本当に簡単な布テープを使って野戦服にザイテンハーケンを付けられておられるリエナクターの方がいらっしゃいました。実はこの方、トラーゲグルテの再現、ということよりも、ちょっと状態の悪い実物フェルトブルゼをリエナクターとして着用なさっておられたので、そのフック通し部分が装備の重みで負担がかかり、破けるのを防止するためにテープを使って造ったとおっしゃっておられました。レコレクショヌールが軽くショックを受けたのは、この方がなんと、「この内蔵サスペンダーは実物を見たことがないが、きっと湾曲しているはず。この自製の代用品のように直線だと、たわんで、肩に食い込んで痛いから」とおっしゃっておられたことです。まさに実践体験による史実へ接近、ミリタリアにもピラミッド副葬品の謎が解けた時のような感動が!といった感動がありますよね。もうひとつ、サイトにうコラムをアップしてしばらくしてからお電話をいただいて、数日後にお目にかかったコレクターの方で、だいぶ以前に海外オークションで購入したフェルトブルゼに付属していたトラーゲグルテについて、意見を聞きたいという方がおられました。お持ちいただいた現物を拝見しましたが、このトラーゲグルテ、寸法は私たちの知っているものとほぼ同一ですが、肩部分とアイレット(はとめ)部分が手縫いで結合されている、全体にストレートの構造のものでした。オーナーの方も資料に載っていないのでコレクター仲間に意見を求めたところ、否定的な見解を述べられた、とつらそうでした。肩部分は織りと厚みから、熱帯向け・綿製Yストラップの素材に近いもの、またアイレットのあいた両端はちょっと薄めのシャツ生地のようなものを折りたたんで手縫いで作ってあるものでした。官給品トラーゲグルテとはだいぶ異なるもので、「実物ではない、と諦めている」といわれるオーナーの方とも正規のものとは異なるという点で意見の一致がありました。しかし「にせもの」という言葉はあいまいなもの、です。この言葉に100%あてはまる流通ミリタリアは意外と少数といえます。この通常と異なるトラーゲグルテも、もう一度よく考えてみると、気になるのは使われている素材がすべて当時のドイツの生産によるものであること、もうひとつはミシンが使われていないこと、です。トラーゲグルテは野戦服のインテグラルな付属品とはいえ、かなりの重量がかかるもの、消耗率も激しいと思われます。また、装備ですぐに手を加えられるのは肩当部分であること、さらに取り外し可能なもの、にどうしてもあるのが紛失の可能性です。このトラーゲグルテが当時の戦地での自作品、といえない理由がどこにあるでしょうか。 このコレクターの方にも官給品トラーゲグルテの入手のご依頼をいただきましたが、今、現時点ではこの代用トラーゲグルテはこのコレクターの方にとっては手にしていて快適な気分でいられるものではないかもしれません。しかしひとたび、コレクター間で共通認識を得ている官給トラーゲグルテを入手したあとは、魅力あるヴァリエーションとなりえるのではないでしょうか。事実、この「私物」トラーゲグルテの話を何人かのコレクターにしたところ、「それを見てみたい」と興味を示す方が2人いらっしゃいました。このお2人がおふたりとも、実物トラーゲグルテのオーナーです。先日、「レコレクショヌールはベトナム戦争のコレクターをよく言いすぎる、持ち上げすぎる」と2次戦コレクターの方にはっきりと言われ、気をつけようと思ってはいるのですが、この点もベトナム戦争コレクションにおける、柔軟性が利用できればさらにコレクション感覚がひろがるのでは、と想像してしまいます。ベトナム戦争では被服・装備・徽章のミリタリア3大ジャンル全てにベトナム現地製、または周辺国製の生産品が存在し、アメリカ本国製と同格またはそれ以上に評価されます。これも当然で最も難題のコレクション対象、タイガーストライプ迷彩服が、インディジィノス(indigenous、土地固有のといった意味)アイテムの代表なわけですし。自動車パーツのように規格がはっきりした官給品以外のものに対する冷淡さがWW2コレクションにはありがちであるようで、以前お客様にお求め頂いた私物・現地製WW2アイテムを最近になって再び拝見すると微妙によく見えたりすることも少ないないのです。


〜コレクターとの会話・7〜 「オークションとコレクション2」

「オークションのはなし」をアップしたところ、レコレクショヌール担当者が驚くほど大きな反応がありました。レコレクショヌールは2000年以降、国内ミリタリア・コレクションのコミュニティ(共同社会)はコレクションの目標を高く持つコレクターが増加しており、、さらに以前コレクションをしていたが理由があって一時この世界を去っていた人が復帰してくるようになり、そして不況、不景気と暗い話題が多い中にもかかわらず、ミリタリー関係のイベントが各地で多く行われ続けているのも、ヤフーなどの国内オークションの普及がそのポジティブな理由としてあると考えています。
レコレクショヌールは国内オークションの定着はミリタリア・コレクションの向上に寄与していると考えており、オークションの話1で申し上げたとおり、流通量の多いものなどの入手ご希望のお客様にはオークション参加による、ご自身でのアイテム入手をお勧めしております。

○ 知識とコレクターとしての常識育成の道場、オークション
前回の「コレクターとの会話」では「どんどんオークションに参会してコレクターとして腕を磨いて下さい!」という趣旨で書かせていただきました。オークションが普及してから、お客様の質問の内容がだいぶレベルアップされた、というのがレコレクショヌールでも、またディーラー仲間でも一致した印象です。つまりオークションが情報収入の場所として機能している、という良い傾向があるといえます。また、市場に残存数の多い一部の被服類や装備品などは安価で入手できるようです。どなたにとっても出発点となることの多い「ゲームで使うトイガン」に適合した、野戦の印象をもつユニフォーム一式は、日本への輸入総量も多く、また納得して手放す人も多いため、オークションを通じて比較的早くそろうになっているようです。早くベーシックをそろったリエナクター/コレクターは次のゴールを設定してより高度な収集品にチャレンジすることができるようになっているようです。または現在所有しているコレクターのレベルアップ(コンディションやサイズなど)を図るという、以前は何年もかかったプロセスを素早く経過して、1段階上へのステップアップが非常に短期間でできているようです。また「自分で値段を決める」という行為は、長引く不況で以前よりもさらに緊張度の高いものとなっています。ここでは仕事や勉強に準じた常識と判断が必要です。ここで、オークションは最近のミリタリアコレクターおよびコレクションでとても強く感じる「脱遊び・脱おもちゃ」の傾向に貢献しているのではないでしょうか。

○ オークションは両方向から2度利用し、買い手の不利さを克服する
ちょっといやな言い方ですが、オークションというシステム自体は売り手に有利なようにできています。オークションのオーナー、つまりオークションハウスの主催者の多くは自らは品物をもたず、そのオークションを信頼するヴェンダー(売り手)から品物を預かり、入札―落札を代行するものです。このことはオークションハウスでは品物が集まらないと、入札業自体ができませんから、売り手はこの枠組みに自然と保護されるわけです。アイテムの説明はオークション主催者が責任をもつとしながらも品物の所有者が書くものですし、表現の是非はどうしても売り手主導になりがちです。ではオークションでものを入手するのは不利なのか、ということではありません。少なからざる人がオークションとはコレクション・ショップの代用品と考えてしまって、「買い」に重点が置かれている例がほとんどであるようです。コンピュータの画面を見つめて、入札状況を見るのは大変な労力です。入札をなさるのも今現在、勢いに乗ってコレクションを成長させているコレクター諸氏ばかりでしょうからこの傾向は当然なのかも知れません。が、この状態では、どうしても「ものを持っている人が有利」というコレクション旧体制時代と変わりません。オークションではものを入手する「売り」と処分する「買い」を同時に行ってこそ、参加の意味があります。とはいっても「自分は無駄なコレクションはもっていない」というのは基本ですし、当然ですから「とはいってもねぇ。売るのはなぁ。」と気が進まない、というのもごもっともですが、どんなものでも結構ですから、まず一度「売り」をなさってみてください。実際に販売をするために思考回路をリヴァース、逆方向に入れ替えると、販売者側の論理のようなものが一瞬で理解できて、これは不思議なことに、買い手/購買者としてとても冷静な判断力に結びつきます。衝動買い、失敗が一気に減りますよ。それと当然ながらコレクションとは売り、買い、交換を同時に行うのが理想です。売り・処分でお金が入ればコレクションの予算に余裕ができて生活レベル向上とご家族との関係の良くなるかも?しれません。 (念のためにご説明:ごめんなさい。偉そうなことを書いたあとで申し訳ないのですが、レコレクショヌールはコレクションの買取をしていないのです。販売を通じてなんとかできたお金はすべて海外買い付けの際の現金資金に投入するため、国内で買い取る余裕はなかなかできません。しかし、最近のオークションの普及はレコレクショヌールにとっても少し気が楽になっています。「結婚するのでコレクションを処分したい(これって聞くと、おめでとうございますと言いつつも、ご本人はつらいだろうな、と思ってこちらもちょっと落ち込みます。)」、「WW2のコレクションへ変更する」などの理由でコレクション買い取りを申し出てくださる方は多いのですが、すべてお断りしていました。そこで買取をしてくれるお店を紹介したりもしていたのですが、それも余りうまく行くケースは多くなかったようでした。オークションが普及してからは、ここでの処分をお勧めしたところ、あとでお電話を頂戴し「うまく売れた!」というご報告を頂戴したりするようになりました。ディーラーとしての良心の呵責からも、コレクター諸氏のオークション参加をお勧めし、そこでの成功を応援しているわけです。) また、このところ、「こういった品物をオークションで手に入れたものだけれど、元の所有者がレコレクショヌールから購入したといっていたので」という電話があり、なんだろうと思うと、「このアイテムに関連した○○が欲しい」といった商品のお問い合わせだったりすることが増えました。このことは物の動きが人から人へ活発に動いていることを意味しており、まさにミリタリアが「正統派アンティック化」してきているといえるでしょう。

もしこのまま国内オークションの普及がなかったらどうなっていたでしょうか。 外国人が「私は日本に少なくとも100着はナイロンのフライトジャケットの良いものを送った。それを買い戻して自国で売りたい。どこへいけば買えるのか。」という質問をしてきたとき、日本人は自分でものを処分することは難しい、というと「何故、オークションがないのだ?」とあきれられました。先日「今はよいオークションができて、流通も安定するようになった。」と外国人に言ったところ、「そうか、これでやっと日本もまともな(健全な)コレクター社会になったな。」と、こちらがちょっとむっとするようなことをいわれました。オークションがなかった時代はそれほど原始的な状態だった、というわけで、売ったら売りっぱなしで品物がコレクターのところに溜まる一方、というのは価値あるものの流通ではない、ということです。つまり良質なオークションがあってこそ、そのコミュニティにおけるコレクションは健全なものになるといえるでしょう。

○ 熱くならずに、「冷却効果」にオークションを
オークションはコレクター自身のカームダウン(冷却剤)にも役立ってくれます。??オークションを見ていたらどんどん品物が売れてゆくのを見てどんどん熱くなって、さらにお金を使ってしまうのではないの??と思われるのも当然ですが、この「冷却効果」は実際にこの効用の恩恵を受けたお客様から伺う話なのです。どうしても欲しい「特定のアイテム」があり、それに熱心に取り組む方ですと、「ついつい」高いアイテムでも買ってしまいます。どんなものが?といえば、アメリカ軍関係で例をあげるすると、WW2アメリカ軍関係、短機関銃のショルダー式ポーチ(ミラー大尉のポーチっていう、あれです。)など、また、すでに異常人気は収まりつつあるとはいえ、もっとよくわかる例だとベトナム戦争アメリカ軍関係のライトウェイト・ラックサック、このところ沈静化してきたアイテムとしてはやはりベトナム戦争アメリカ軍関係の海兵隊ボディーアーマーといったところでしょうか。特にいままでそれほど珍品とはされていなかったのに、過去3年以内にその希少性が高まり急速に高額になったものにその傾向が強いようです。さらにヴァリエーション違い、というわけでもないのに、同じものをふたつ、みっつと、いくつも買ってしまう。これってありますよね。これを書かせて頂いているレコレクショヌールの担当者でも、やっぱり、「つい目にすると、欲しくって、おろおろしてしまい、結局自分のコレクションに加えるべく買ってしまう」アイテムはあります。この衝動って、なかなか自分でコントロールできないですよね。「珍しいものなのだ。高いものなのだ。」と考えすぎてしまうと、つい、判断力が鈍りがちです。オークションを通じての落札価格の観測はこういった自分の熱意による過度の購買意欲のカームダウン(冷却・沈静化)になりうるものです。関東のショーで、既述のような特定のアイテムに熱中していたコレクターの方がレコレクショヌールのブースにお越しになり、お探しのアイテムがあそこのブースで売っていましたよ、と情報を申し上げても「いや、もう○○はこのくらいでやめることにしました。」とおっしゃいます。「それはまたどうして?あんなにいくつも購入なさっていたのに。」とお聞きすると皆さんが「もっと○○が欲しくってオークションをみたら、もう人気アイテムでなくなったようでとても安く出品されていた、また入札価格のせり上がりも以前とはぜんぜん異なって高くならない。もっと極端だと、ちょっと高いとだれも入札せず、入札不成立で流れている。一気に冷静になった。」とのことで、この「オークションでの現勢取り引き価格を見て冷静になった」というのはお電話、お手紙、ご来訪の際の雑談などで大変よく聞く話です。以前のように「人気アイテム」は永久不変ではありません。コレクターの興味は常に「古くて新しいもの」を求めて変化しています。オークションは落札価格という動かざる事実により、このトレンドをはっきりと表します。これにより希少性に対するある意味の「焦り」をもつコレクターは減ってきているよう印象を強く感じます。でも逆にオークションによって今何が人気があるのか、高く取り引きされているのかという逆の利用法をしたら....。恐ろしいことになってしまいしまいますよね。

○ アメリカでのミリタリア取り引きとオークション
コンピューターによるオークションの普及は私たち日本人コレクターの社会以外でも、さまざまな影響をもたらしています。モラル上の問題からサイトなのでは申し上げられない話も多いのですが、最近複数の人間からよく聞くようになった話を1点ご紹介します。ミリタリアの世界では、良いことも、良くないことも発生件数が多いのがアメリカなのですが、アメリカ人ディーラーの間では、いわゆる大量購入、ロット買いができなくなったという話が頻繁に出るようになりました。私たちが取り引きしたりするアメリカ人ディラー、インターネットのサイトなどで日本人コレクターにも直接販売をしてくれるディーラーたちは職業ミリタリア販売者としては第2世代です。第1世代はというと、度の世界でもそうか知れませんが、倉庫業者です。彼らは大きな倉庫を持ち、そこへ入札などで手に入れた軍からの放出品をどんどんしまい込み、人づてに知り合った来訪者―これがアイテムの知識と販売相手である顧客をもつ第2世代のディーラーたちに、何十年もかけて、小規模に販売していました。今まで彼ら第1世代は自分たちものを売るというような主導権がありませんでした。ミリタリアに限らず、アンティックでは、まずそのアイテムが何なのか―identify(識別する)とその価値がどの程度なのかvaluate(価値を評価する)能力が必要です。倉庫業者の多くはこの2要素をもたず、価格設定も実際の販売もできませんでした。コンピューターオークションではこれらの専門知識はまったく必要ありません。画像を載せて、適当に参考価格を設定すれば、専門知識のある人が自由に、適正価格をつけてくれるからです。例をあげると、出品者が電気技師でも使うような「こ汚いベスト」だと思って20ドルをつけていたものが、次の日に入札結果を見てみると、3000ドル!がついていてびっくり!読んでいただいているかたにはお分かりいただける通り、これはDディ・アサルトベストだったわけで、倉庫業者の「おやっさん」はまず驚いてから、大喜び、さらに以前、20ドルで同じベストを売っていたことを思い出し、おやっさんの提示した値段を聞いて黙って買っていったディーラーの顔を思い浮かべ、差額の2980ドルを儲けたのかと短絡的に考えてひとりで怒り狂い、もう誰も信用するものかと、忙しく感情を変化させるわけです。そんなことがあったともしらず、いつもの第2世代ディーラーが「今度また日本人ディーラーが買い付けに来るから、おやっさんの倉庫で買出しでもしておこうか」とやってきても、理由もつけずに「帰ってくれ、もうおまえはうちの倉庫へは入れないわい。」となるわけです。倉庫業者としては自分のもっているものの価値がわかって、また今まで損していたと思われる金額もはじき出していますから、けんもほろろです。つまり、現役ディーラーにとっては安い値段でよいものを大量に、また商売として美味しい話がコンピューター・オークションの普及でできなくなってきている、ということです。でもこれはいい気味だ、などという低次元の話ではありません。つまり、上記の「コンピューター・オークションなら誰もが高値で、場合によっては適正にアイテムの換金ができる」状況下では、良質なコレクションを販売目的で入手するためには、お金が唯一の解決策になってしまいます。何でも高く買うから、うちへ持って来い、となるわけです。最近のアメリカ市場でのミリタリアの価格高騰は異常といえるものです。(eベイなどのオークションで見てください。)この高騰の原因は意外とハリウッド映画のせいなのではなく、こういったコンピューター・オークションによるアメリカでのダイナミックス(力学)の変化がその原因なのかも知れません。

日本国内、また世界中のミリタリア取り引きの現場で聞くオークションの話はまだまだ興味深い話が沢山あります。先ほど申し上げたように、モラル的に申し上げられないもの、まだ「時効」となっていないものをのぞいて、私たちディーラーにもお客様であるコレクターの方々にも有益で面白い話、また、皆で知識を共有していれば失敗やいやな思いをしなくてもすむことにつながることを、これからも「オークションの話」としてこのサイトでご紹介するつもりです。

important notice! レコレクショヌールはオークションによる商品の仕入れは行っておりません。また、出品による商品の販売も行っておりません。

〜コレクターとの会話・6〜 「オークションとコレクション」

「国内のオークションに参加したいのですが。」 / 「どんどん参加なさるべきです。」

国内ではヤフーオークション、海外では郵便による入札から始まって世界規模のミリタリアおよびアンティック・オークションとなって数十年のアメリカ・カンサス州のマニオンズ・オークションとインターネットの普及で急速に伸びたEベイ・オークションがあります。 レコレクショヌールでは、お客様にはこれらのオークションへの参加をご提案し、お勧めしております。トップページでも書かせていただいたように、現代はコレクションの新時代。コレクション対象となる品物の半数はコレクター、お客様がご自身で入手できる時代になっており、またそうすべき時代になっております。「やってみるとよいですよ。」とお勧めすると、「えっ、でもレコレクショヌールも商売なのに、どうして。」と心配してくださる優しいお客様もいらっしゃるので、ご説明すると、例として「ベトナム戦争関連のM56装備H型サスペンダーが欲しいのですが。」とお電話をいただいたとします。レコレクショヌールで入手するのは珍品の初期の溶接フックタイプかサイズLやXLの生産数の少ないものだけです。どこの軍隊でも野戦装備でサスペンダーは残存数が多いものですし、仮に最近サープラス店で見かけなくなったとしても、残存数と流通量はかなりあるものです。ヤフーオークションでのサーチをお勧めするとほとんどの方が価格的にも安くてよいHサスを見つけられてこられます。この「例」として挙げたHサスペンダー、他のカテゴリーのコレクターの方にわかりやすく申し上げると、WW2ドイツだと、将校用オーバーコートや兵用官給品雑のうやマップケース、WW2アメリカだとM28ハバーサック(最近は減ったかも)といったアイテムです。残存数の多いアイテムはオークションで探してゆくのが、コレクターにとっては時間的にも金銭的にも有利といえます。でもひとつ白状しますとレコレクショヌールの仕入れ担当者にとっては仕入れする品物の種類が減る、という裏話もあるんです。実際に国内オークションが普及してからレコレクショヌール担当社の頭の中にあるお客様の「ご依頼品リスト」の管理がとても楽になりました。でもこのリストその分「超珍品リスト」となってきていて、「いったいどのくらい時間がかかるのだろう。」と考えてしまいます。

オークションへの参加はコレクターにとって、経験値を積み、情報を収集する、という意味でとても良好な効果があります。オークションに出品した品物は、その説明文が入札の状況に大きく影響を与えることから、売り手が懸命に書くため、写真よりもこの文章にコレクションの世界での重要な常識や情報が詰まっているものです。売りたいがゆえの嘘などは慣れると以外にすぐにわかりますのでそれほどご心配はいりません。コレクションの充実を図ることは、決してお金とお買い物のことだけではなく、お金を使われるお客様が売り手以上に情報で武装し、さらに常識を使ってご判断をなさるものです。このことはお客様自身が資料や友人関係とを通じて身に付けられるもので、「トレーニング」が必要で、時を追ってレベルアップしてゆく「スポーツ」のようなものです。今から思うとレコレクショヌールの担当者も20年くらい前、個人コレクターとして海外オークション入札をしていたころがコレクターとして大きなステップアップをしていたようです。レコレクショヌールでご提供する品物のなかで、(お金の話をして品のないことを申し上げますが)WW2ドイツ・コレクションやアメリカ軍の状態の良い被服(未使用品、というだけで極端に値段が違いますよね。ほんとに高い。)、100%実物のローデシア軍コレクションといった、レコレクショヌールの広告をご覧になっているお客様が「いったいどういった人たちが買ってゆくんだろう。」と考えてしまうような高額なアイテムをお求め頂くお客様のうち、50%の方がこれら海外オークションでの入札経験者であられるという事実があります。しかし、オークションでは、ひとつ問題があります。私たちディーラーと個人輸入をしている個人コレクターが苦しんでいる様々なリスクをそのまま入札者が負わなければならない、ということです。しかし、このようなリスクがあっても、オークションには参加すべきです。レコレクショヌールの担当者も海外オークションで落札して、事情があって返品できなかったもののなかには今でも思い出すと激しい怒りを感じるものも確かにあります。しかし、コレクションの世界では100%リスクをさけることは残念ながら難しいのが事実です。ここではディーラーでも皆様コレクターでも、何の強弱のさもありません。また外国人ディーラーが悪いというわけでもありません。彼らが持っている日本軍コレクションも、「コメントを求められたらどうしよう。」と思うような気の毒なものも多々あるのです。

○ オークション―レコレクショヌールで時折ある困った話
レコレクショヌールは販売を目的としながらもミリタリア・コレクションに関することならどういったお問い合わせも歓迎ですし、誠実に対応しておりますが、大変困るご質問があります。ある日、Eメールのお問い合わせが来ていて、あけるとタイガーストライプの上着の画像が入っていて(例えば、ですよ。でもタイガーの画像ってこのケースで多いんです。)「いつもお世話になっています。(でも大抵の人が初めてお名前を伺う方です。)ヤフーオークションで出品されているものですが、これって「ほんもの」ですか。」という文章がはいっている、という事例です。困ったな、と思って返事を慎重に(どう慎重に、かは先を読んで下さい。)書こうと思って次の日になると、その方からお急ぎだったようで電話がかかってきます。もうしかたがありませんから、電話で思っていることを全部申し上げることになってしまうのですが。 「レコレクショヌールは規模は小さいですけど営利目的ですから、販売を目的として出品されている品物について意見を言ったり、ましてや真贋鑑定など絶対にできません。出店されている方の立場になってみてみてください。自分の出したものをどこかでだれかが真贋について語っているとして、それが原因で換金できなかったら?ご自身がその立場だったら、大変不快な思いをなさるはずです。」 さらに取り引き前の商品について第三者は何も言わない、というのは骨董業の鉄則でもあります。オークションは大人のコレクションとして、「リスクは自分で管理する」ということで皆さん参加なさっておられるはずですし。

それとオークションについて最後にひとこと。トップページでレコレクショヌールは海外オークションからの仕入れはしておりませんと申しあげておりますが、国内オークションでの「販売」も一切しておりません。レコレクショヌールの販売するアイテムは旅行の苦手な担当者がひぃひぃ言って海外から仕入れてきたものです。各地のミリタリーショーでの展示販売や雑誌の広告を通じてのお問い合わせ、また品物を見にショールームへお越し頂く方々など、「このアイテム、ひと品」を探していた方とめぐり合うために入手してきたものです。仮に販売できるまで時間がかかっても、ただ、換金するためだけにオークションにかけるのはつらいのです。


〜コレクターとの会話・5〜

「コレクションに対して家族の理解が得られないで困っています。特に結婚後はコレクションがかさばること、不潔である、また高額なものが多いので家計を圧迫するなどの理由で家族の説得に苦慮しております。」

レコレクショヌールお問い合わせ担当―この問題はミリタリア愛好家が何らかの形で抱えるものですね。「このコレクションのよさが解らないほうが悪い」という半分冗談のような声もよく聞きますが、当然ながらそれでは問題の解決にはなりません。また良さがわからないほうが悪い、と本当に思っている人はいないでしょう。ある意味で、軍隊の品物は人にいやがれるのは当然ですし、衛生上の問題も当然あります。お金がかかることにしても、傍らで見ている人にとっては、ましてご家族の方だったら、本当にご心配なことでしょう。こういった問題をかかえる仲間や後輩たちが過去にとった対策でもっとも効果的なものが、逆にその品物の価値をご家族に公開してしまうことです。こんなに高いものを、言われるのを覚悟で、価格公開を行った上で、レコレクショヌールが常に提案する「品物の2方向性」の実行をご提案します。つまり。骨董コレクションの1種である、という点を強調し、新しいコレクションを入手するのと同時に不要となったもの、長く所有していて納得したものをヤフーなどのインターネット・オークションへの出品、より良い方法として関東・近畿の販売ショーの個人ブース参加(地理的に制約のある方もいらっしゃることでしょうが。)などでどんどん処分し、換金してゆきます。これにより、まず、スペースの問題がわずかながらでも解決されますよね。また、コレクションにかける予算も還元→循環するこになり、コレクション貧乏(レコレクショヌールお問い合わせ担当喪仕事でミリタリアを扱っていても、いつも自分のコレクションのための予算は厳しいものです。)から開放されるかもしれません。そして何よりも、ご家族にこの趣味がお金を回収することができて、今コレクターが持っているものは将来換金できるのだ、さらに時間が経つと希少性が高まり、投資的な意義もあるのだということが示されることでしょう。あるお客様が年に何回かショーで不要コレクションを販売し、その売上を家族にみせ、家計の一部として提供したところ、以前は小言ばかりいっておられた奥様が、ショーの日の当日は朝早くお見送りをしてくれるようになり、コレクションについての小言もなくなったそうです。ただ、このお客様、売上の何分の一かしか「申告」していないそうですが。


〜コレクターとの会話・4〜

「タイガーストライプが欲しいのですが。」

ジャングルファティーグはこの世界に入ったときに古着屋で買った。その後新品に近いものをちょっと高かったけれども、ミリタリーショーで見つけた。たまたまサバゲー仲間が10年前に買ってもっていたERDL迷彩上下が安く買えた。さぁ次はタイガーストライプだ、と、ここでお問い合わせを下さる方が多いようです。ところがタイガーストライプは多くのコレクターが通ってくるコレクション発展プロセス、つまり熱帯戦闘服(ジャングルファティーグ)、ERDL迷彩服の延長線上にあるものではありません。国家が生産した生産した正規被服ではないタイガーストライプは、非常に多くのヴァリエーションがあり、最近のコレクターが資料として重要視する英語洋書「タイガーパターン」(ISBN番号0−7643−0756−8)の分類法でも最も大雑把な分類で5大パターン、ここからさらに細分化されています。(この本が出版されたのちもタイガーストライプの分類はさらに細かくなされるべき出るとの論争が欧米でなされています!)お金がかかるミリタリア・コレクションにおいても、タイガーストライプはお金と集中力をコレクターに要求します。現在、良質なミリタリア販売業者が多くなり、ミリタリーショーが各地で開催され、ヤフーオークションなど、国内でミリタリアが入手しやすくなり、ファティーグ→ERDLといった通常被服は手に入りやすくなりました。この通常被服の入手の容易さを海外旅行に例えるとパッケージツアーで適価で良いものを、とするならば、タイガーストライプはいまだにお金も時間もかかる客船クルーズといえるでしょう。タイガーストライプのパターンを理解して、ヴァリエーションを知り、また良いものをお金を使いすぎずに集めるとするならば、最低5年、10年はかかることでしょう。まさに大人の骨董コレクションの域に入ってしまいます。といっても他のベトナム戦争アイテムの質感と印象の全く違うタイガーストライプはコレクターを魅了するものです。タイガーストライプの魅力に「はまった」あとで、お金と精神力を使い果たし、もういやだと、この楽しいコレクションの世界から去って行ってしまうコレクターの方が多いのも事実なのです。とにかく何でも良い、タイガーストライプをひとつ買おうとしていたコレクターは、かならず、最初の1枚に満足できず、次の2枚目にも満足できず、その後何枚も購入してゆくことが多く起こります。これがその固体その固体で全く異なる官給品ではないタイガーストライプのファティーグなどと違う点で、ここで苦しむコレクターが多いのです。ここで、ミリタリア収集の大原則、ゆっくり、じっくりをお勧めします。タイガーストライプならなんでも、というのではなしに、どのパターンにご自身がご興味があるのかを見極める必要があります。例として、シルバーまたはタッドポールとよばれるパターンと、オキナワまたはジョンウェインと呼ばれるパターンでは基本反復がかなり異なり、これらを求めるコレクターの収集方針にもかなりのずれがあります。私たちコレクターは今現在は様々なものに興味をもってても、原点はかつて見た映像、またはたった1枚の写真に端を発していることが少なくありません。タイガーストライプの世界に入る前にもう一度、熟考を勧めします。


〜コレクターとの会話・3〜

「アメリカ軍M1ヘルメットが欲しいのですが。」

最近急激に増加しているこのお問い合わせ、1週間に2回はこの特定のお問い合わせを異なる方から頂きます。典型的な「最近状況が急変したアイテム」の例です。 「WW2当時のM1ヘルメットが欲しいのですが。」 このところ、WW2当時のM1ヘルメットは急速に流通量が減り、価格がせりあがっています。以前は程度そこそこ良好で50ドル相当であったカーキ・チンストラップ付M1ヘルメットはライナーともにWW2当事の生産品ならば150ドルは下らなくなりました。150ドルというと実際には2万7000円、かなり善意の業者でも販売するなら4万円を超えてしまう、という現状です。これでは迂闊に輸入できません。 「では、ベトナム戦争当時のものでも良いのですが。」 これがまた、ベトナム当時のヘルメット、ボール式レリース・を備えた外帽、ナイロン積層のライナーのヘルメットも、さらに80年代の改良内装を持ったライナーのものも、このところ一気に姿を消してしまっています!「えぇ!」と私たちも最初は驚いたのですが、このところ6ヶ月、既述のように頻繁にお客様から「どこの店にもM1ヘルメットがない。」とお問い合わせを頂き、アメリカや在ドイツなどのアメリカ軍関係を大量に持つ業者に問い合わせをするにつれ、その状況の深刻さに驚きました。先日電話をかけて来て、「専門工場がないと生産できないヘルメットは以前より、武器などと一緒に支援物資として海外へ流出していたため、この3年間で突然残存量が干上がってしまったのだ。」といっていたアメリカ人ディーラーがいました。このディーラーはいわゆる「倉庫めぐり」の業者で、サープラス専門の傾向が強いためあまり付き合いはないのですが、実際に100個くらいでは話にならないというような大量ストックの軍装品を扱っている彼なればこそ、この「消えたM1ヘルメット」の状況を肌で感じていたのでしょう。ケブラーヘルメットが使用されるようになってすでに数十年が経とうとしています。最近までは入手困難であるとは思わなかったM1ヘルメット、考えてみれば品薄になるまでにかなり時間的な余裕があったのかもしれません。


〜コレクターとの会話・2〜

「WW2ソビエト陸軍のコレクションですが、確実にWW2当時のものが欲しいのですが。」

最近急増したWW2ソビエトのコレクションをなさる方の特徴として、他のWW2カテゴリー、例えばWW2ドイツ、WW2日本軍など、枢軸国コレクションの経験者が多いような気がします。「45年の戦争終結以前に製造された実物が欲しい。」とい希望はコレクターであれば当然の気持ちです。しかし、ここにWW2ソビエト関係の大変難しい要素があります。WW2ソビエトの代表的な被服体系は帝政ロシア時代の階級章である、肩章「パゴーニ」を復活させた1943年1月15日制定服装規定によります。ところがこの規定は1954年まで9年間全く変更なく継続され、その間、ドイツ、日本と戦争があった当時とほぼ全く同じ被服装備が使用されていました。さらにソビエトの被服は製造・受領スタンプが押されていない例が多く、仮に押されていても水分にとても弱いものであるため、難読である例が多いのも問題です。 他の戦勝国、アメリカやイギリスなどは、基本的なものは踏襲しつつも、終戦後は早い時期に「平和時の軍隊」という印象をもたせるべく、基本被服を中心に改正を行っています。(アメリカのアイクジャケット、イギリスのバトルドレスの戦後型など)さらにWW2ソビエトに興味をもたれる方の多数派がWW2ドイツやWW2日本軍などのコレクション経験をもつことから45年の終戦というはっきりした体制変換に慣れているため、1943年から54年まで変化のないソビエト軍コレクションの特質は理解しづらい点があります。実物ドイツ軍コレクションで鍛えられたコレクターは素材の分析と、ミシン糸と使用ミシンの見極めにより45年以前の者を見極めようとすることもありますが、この鑑定法が実際には欧米でも十人十色、ショーなどでは隣接した2つの販売ブースでそれぞれ全く異なることを主張する場合もあります。 それでもどうしても、45年以前の生産品をさがすならば、以下の方法があります。
*43年1月型肩章式ギムナステョルカは、それ以前の折襟式ギムナステョルカを改造して、間に合わなかった生産を補おうとしているものがあります。このタイプを求める。
*アメリカ供与によるレンドリース素材、多くはアメリカ軍野戦シャツ用ウール素材ですが、これを用いたギムナステョルカを求める。
しかし、このような常に45年以前・以降について余りにも深刻に考え、疑心暗鬼に陥るのはソビエトロシアに関してはいつも良い要素とは限りません。コレクター自身が、自分の持つ印象に限りなく近いもの、納得のゆくもの、を求めるのがコレクションの重要な基本ですから、自分なりに条件を定め、その範囲内で収集物をスクリーンにかけていったほうが良いでしょう。この文章を書かせて頂いているレコレクショヌール担当者自身もソビエト軍コレクションの第1人者であるフランス人に「ソビエトのコレクションをするならば、ドイツ軍やアメリカ軍のコレクションでいままで築いた常識は一切通用しない。特にプレ45年、ポスト45年に関しては、こだわっていると逆にコレクション洗濯の実力がつかない。」といわれたけ意見があり、お客様であるコレクターのためにアイテムを選択していて、この言葉の意味がよく理解できるようになりました。


〜コレクターとの会話・1〜

「ベトナム戦争当時の現地製ローカルメイド徽章類が欲しいのですが、いったいどれが実物なのか判別できず、知らずに複製を買ってしまうことが不安で手が出せません。実物の判定にはどういったことに気をつければよいのでしょうか。」

■ ベトナム現地製ローカルメイドSSI類
 ローカルメイド・インシグニアはベトナム戦争コレクションのカテゴリーでのみ楽しめるもので、ひとつひとつ違った印象を楽しめる、アートの要素をもったコレクションであるといえます。
その製法上の特性には
1)機械刺繍
2)手刺繍
3)両者の同時使用*図案などは機械刺繍、文字を手刺繍でしている例が多い。
上記1−3までカラー、サブデュード両者あり。
*南ベトナム陸軍インシグニア・コレクションで希求される織り出し(ウェイブン、またはWW2式呼称ヴェボ)、およびプリント・シルクスクリーンインシグニアは重要度の高いコレクション対象で、その真贋に関しても話題性はあるのですが、戦争当時アメリカ軍部隊での着用例が少ないことから次の機会に話題にします。

■ 魅力的なコレクション対象なのに、普及しないローカルメイド徽章
現在流通している「レプリカ」ローカルメイド・インシグニア(これ、変わった言葉ですが、こうしか表現のしようがありませんね。)は、ベトナム製の機械刺繍のものを例にとってもアメリカ人が現地でレプリカをオーダーしているルートとフランス人を中心とするヨーロッパ系ディーラーのルートと2系統があり、どちらも色彩、刺繍自体の再現性で独自の差異があります。これらの普及したレプリカははすぐによくできたレプリカであると見分けがつくのですが、問題は少数生産のものです。レプリカ生産の大原則として「採算が取れるか否か」という要素があります。例えばタイガースストライプのブーニーハットを作って人をだまそうとしても、時間とコストがそれに見合うとは限りませんから悪意ある複製に遭遇することは少ない。しかしインシグニアはとりあえずミシンか、手刺繍用の針糸があれば良いわけですから、資本投下はほぼゼロ、また達成すべき売値も10ドルもあれば良い、となれば、たった1点でも作られてしまいます。こういった1点ものレプリカは被服などの大きなものでも、実物素材を流用して製作したものは、製作した当事者が複製を宣言して誠意ある態度をとったとしても、その後転売され、「距離」(郵便封筒でも送れて、大量に送っても送料の安い布製インシグニアは輸出輸入がされやすい。)と「時間」(上記の複製コストの低さから、複製製造の歴史が長い。場合によっては戦争中からも?)に比例してコレクターを苦しめる悪意の複製になりかねません。このようにベトナム戦争ローカルメイド・インシグニアは、非常に魅了あるコレクション対象であるにも係らず、日本国内で普及度が低いのは、こういった悪意ある複製に対する警戒感からの恐怖心、さらにあきらめがあるからのような気がします。

■ とはいえ、どれが実物か?
 ミシンの性質や糸の質、手刺繍の特性などを慎重に見極め、「これが当時の実物である」と特定する方法は、きっとあることでしょう。しかし現在まで多くの鑑定方が取りざたされ、宗教論争のような話が世界各地で繰り広げられています。鑑定法の確立は大変な時間がかかるし、コレクターたちはそれまでに言語による助言に頼らざるを得ず、時間とお金を失う可能性もありうることでしょう。 レコレクショヌールがお勧めする方法は、「鑑定」よりも「対応策」です。 これは納得できる実物、だれもが好む、多数派に指示される「形式」のインシグニアの製法・構造の特性を把握する、という方法です。この「形式」とはミシン、手刺繍の糸運びを意味します。鑑定不能で入手するのが怖い、と思われがちな手刺繍も含めて、当時のベトナム人たちもお金を稼ぐ手段として職人技を磨いたのですから、お互いに技術を盗みあい、効率よく作りつつも綺麗に見せることを目指した、一定の共通性があります。この当時からの特性と、「言葉」で表現できない、現代の多くのコレクターの多くが実物の理想として認める形式を把握することです。いってみれば自分の前にたくさん出てくる、ローカルメイド・インシグニアのなかから、製法上の理想に近いものを割り出す「最大公約数」の要素を探すとでもいえるでしょう。この共通性はひとつでも多くのインシグニアを見て、頭の中のサンプルブックのページをどんどん増やしてゆくことになるわけですが、ここにおいて販売ショーへ脚を運ぶことや、友人・交友関係を広げることが重要になってくるでしょう。さらに多数派の人たちが好む糸使いのうち、「この点だけは譲らない」という特定の製法を決め、コレクションに加える際の基準にする自分だけの「こだわりポイント」を早い時期に確立することを目指します。 とっかかりのひとつとして、まずは100%実物だが、誰も欲しがらない不人気部隊のインシグニアを1点購入して見るのもひとつかもしれません。支援部隊などのインシグニアは安価ですから、授業料としてまず1点入手します。半日も触りまくって、よく観察してみたあとで、以前よりお持ちの複製インシグニアをごらんになってください。まるでメッキがはがれてしまったかのように、以前本物そっくり、と思っていたレプリカの見た目の印象が変わっているので驚かれることでしょう。また、次のステップとして、「実物は実物を呼び合う」という現象があります。次回皆さんがミリタリーショーへいかれた時には、お持ちの実物インシグニアと同じ特性を持ったものだけが白黒写真のなかのカラー写真のように目に飛び込んでくるようになります。

■ 布製インシグニアの観察の指針
 ローカルメイドに限らず、アメリカ軍布製・刺繍インシグニアの現物を見る場合は以下のことに注意するとよいでしょう。この場合、視覚と触覚の両者が等分に必要です。
1)人差し指と親指でインシグニアの厚さを表と裏から触ってみる。刺繍部分と下地部分、末端かがり処理部分の差異を見る。特に裏側の特性把握は重要です。第一に服に縫い付けられたインシグニアはそれが見れないわけですから。
2)表面と裏面に親指を当て、徐々に力を入れてゆき、指のすべり具合を見る。これにより糸の材質@コットン糸の質A化繊糸の混紡の具合が解ります。
3)持ち主に断って(痛んでいるインシグニアは糸切れなどを起こして破損する場合があります。)インシグニアを「U]字型に曲げ、縫いこまれた糸を盛り上がらせ、以下の2点を見ます;
A.縫いこまれた糸の密度の高さ(一定区間に大量の糸が入っている)
B.糸の張力の強さ(縫いこまれた糸の引っ張られ具合)


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